この記事の要点
LP制作会社を選ぶとき、実績の件数や完成品の見た目より先に確かめるべきことがある。それは「構成案から何を外したか、その理由を説明できるか」だ。発注前の打ち合わせと構成案の段階で「外した情報」を聞くことが、ディレクション力を見分ける最も確実な方法になる。
「どの制作会社に頼めばいいのか、正直わからない」
サイトを開いて、ポートフォリオを眺めて、費用のページを確認して——気がつけば何時間も経っている。でも比べれば比べるほど、どこも同じように見えてくる。「実績100件以上」「ディレクション込み」「企画から制作まで一貫対応」。並んでいる言葉はどこも同じで、手元にある候補をどう絞ればいいのか、手がかりすら見つからない。
そんな状況に置かれているなら、この記事はその糸口を渡すために書いた。
目次
実績の件数や見た目では、制作会社の差が見えない理由
候補の会社を比べても、どこもディレクション込みと書いてある
複数の制作会社のサイトを並べると、表面上の違いはほとんど見当たらない。掲載されているLPのデザインはどれも整っていて、実績の件数も似たようなレンジに収まっている。「企画・ディレクション・デザイン・コーディングまで一貫して対応」と書いてある会社が、候補の中に何社もある。
でも実際に発注してみると、納品物が自社の意図とまったく違う方向に仕上がっていた——そんな経験を持つ担当者の話を、私はこれまで何度も聞いてきた。
ポートフォリオの見た目も、実績の件数も、価格帯も、ほぼ同水準に見える。それでも成果は大きく違う。この「見た目の似ている感」こそが、制作会社選びを難しくしている根本の構造だ。
「ディレクション」という言葉が、会社ごとに意味が異なる
「ディレクション込み」と書いてあっても、その中身は会社によってまったく異なる。
ある会社では、ディレクションとは「クライアントの要望をドキュメントにまとめること」を指す。別の会社では「進行管理とデザイナーへの橋渡し」を意味する。そしてまた別の会社では「商材と読み手を理解した上で、何を載せ、何を外すかを判断すること」だという。
同じ言葉が、まったく異なる仕事内容を指している。だから候補を並べて「ディレクション込み」の会社だけに絞っても、実際の仕事の質は比較できない。比べるべきは、言葉の有無ではなく、その中身だ。
LPの仕上がりを左右するのは、載せる情報より載せない判断

1画面に入る量が限られている。スマートフォンの画面で読まれることを前提に
LPは、ほとんどの場合スマートフォンで読まれる。総務省『令和7年 通信利用動向調査』(令和7年8月末時点)によると、個人のスマートフォン保有割合は78.9%に達している。
スマートフォンの画面に一度に収まる情報量は、PCと比べて大幅に限られる。縦長のスクロール設計は必須になるが、読み手が最後まで読んでくれる保証はない。画面を指で流しながら、ほんの数秒で判断される。
この前提に立つと、LPの設計で本当に問われるのは「何を載せるか」ではなく「何を载せないか」だということが見えてくる。
「何を載せるか」より「何を載せないか」で、成果が変わる
クライアントから渡される情報は、いつも多い。商品の特徴、開発背景、成分の説明、お客様の声、競合との違い、価格、保証内容——これをすべて載せようとすると、LPは情報の墓場になる。
読み手が知りたいことと、クライアントが伝えたいことは、必ずしも一致しない。その交差点を見つけて、交差しない部分を削る判断こそが、ディレクションの核心だ。
「載せた情報」は目に見える。だから評価しやすい。しかし「外した情報」は画面に残らないため、その判断の質は表から見えない。仕上がりを左右しているのは、この「見えない判断」の精度だ。
ディレクション力を見分ける「不掲載理由」とは
不掲載理由の定義:構成案から外した情報と、その理由
不掲載理由とは、制作会社がLPの構成案から外した情報と、それを外した理由のことだ。
構成案とは「このLPには何を、どの順番で載せるか」を示したドキュメントだが、同時に「何を外したか」の記録でもある。前者だけ説明する制作会社と、後者まで説明できる制作会社では、ディレクション力に決定的な差がある。
「載せる理由」はどの会社でも言える。「外した理由」は、商材と読み手を理解していないと言えない
「なぜこの情報を載せたのですか」と聞けば、どの制作会社でも答えは返ってくる。「読み手が知りたい情報だから」「競合との差別化になるから」「信頼性を示すために必要だから」——これらは一般論として成立する答えで、商材を深く理解していなくても口にできる。
しかし「なぜこの情報を外したのですか」と聞いたとき、具体的な答えが返ってくる会社は一気に絞られる。
外した理由を説明するには、次のことを理解している必要がある。
- その読み手が、LPにたどり着く前にどんな状態にいるか
- 商材の特性として、どの情報が決断を後押しし、どの情報が迷いを生むか
- 広告の入口(検索なのか、SNSなのか、他媒体からの流入なのか)によって、読み手の前提知識がどう変わるか
この3つを理解していなければ、「外した理由」を具体的に説明することはできない。だから不掲載理由を聞くことが、ディレクション力を見分ける最も確実な方法になる。
発注前の打ち合わせと構成案の段階で、外した情報を聞く
「外した情報と理由を聞く」タイミングは、発注前の打ち合わせと、構成案が提示されたときが最も重要だ。この2つの場面で聞くことで、制作会社がどこまで商材と読み手を理解しているかを、契約前に確認できる。
発注の場面ごとに何を聞くべきかは、次のセクションの比較表で具体的に示す。
発注の場面ごとに聞くべきこと

初回の打ち合わせから公開後の見直しまで、各段階での質問リスト
| 場面 | 聞くこと | 答えに含まれていてほしいもの |
|---|---|---|
| 初回の打ち合わせ | このLPで、どんな読み手に、どんな行動をしてほしいのか。その読み手は、今どんな状態にいるのか | 読み手の具体的な状態、行動の先にある成果、競合との違いを意識した説明 |
| 構成案の提示 | この構成案から、何を外しましたか。それはなぜですか | 外した情報の具体例、外した理由(読み手の行動・商材の特性・法令など) |
| デザイン案の提示 | このデザインで、読み手の目はどこに向かいますか。その順序は、読み手の行動と合っていますか | 視線の流れ、読み手の心理状態の変化、デザイン上の判断根拠 |
| 修正を依頼するとき | この修正で、読み手の行動はどう変わると予想しますか | 修正による読み手の行動変化の予測、成果への影響の見立て |
| 公開後の見直し | このLPの成果から、次に何を改善すべきですか。その理由は何ですか | 成果データの読み方、改善の優先順位、次のアクションの具体例 |
この表を使って、制作会社を評価するときの着眼点を補足しておく。
初回の打ち合わせでは、制作会社が読み手の「状態」を具体的にイメージできているかを確認する。「20代〜40代の女性」という属性ではなく、「今まさに何に困っていて、何を検索してこのLPにたどり着くのか」を語れるかどうかが分かれ目だ。
構成案の提示では、前述の「不掲載理由」を直接聞く。この段階で具体的な答えが返ってこない場合、それ以降のディレクションの質も推して知るべしとなる。
デザイン案の提示では、見た目の好みを話す前に、読み手の視線の流れを聞く。デザインは美しさではなく、読み手の行動を設計するものであるという前提を、制作会社が持っているかどうかが確認できる。
修正を依頼するときは、「CTAボタンを赤くしてほしい」といった指示ベースではなく、「読み手の行動にどう影響するか」という問いを起点にする。この問いに答えられる制作会社は、修正を感覚ではなく根拠で判断している。
公開後の見直しは、多くの場合、発注時には見落とされる場面だ。しかしLPの成果は公開後のデータを読んで初めて見えてくる。成果データをどう読んで、次に何を変えるかを説明できる会社かどうかを、事前に確認しておく。
表示の規制が関わる商材では、法令が不掲載理由になる
景品表示法が禁じる表示と、LPから外される情報
健康食品や化粧品など、表示の規制が関わる商材では、「法令上、載せられないから外した」という理由が不掲載理由に加わる。
消費者庁『不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)』は、商品やサービスの品質・価格・取引条件について、実際より著しく優れているまたは有利であるかのように見せかける表示を禁じている。LP制作の現場では、この規制に照らして「書けない表現」「使えない訴求軸」が出てくる。
そうした情報を構成案から外したとき、制作会社がその理由として「景品表示法の規制に抵触するため」と説明できるかどうかは、法令理解の深さを示す指標になる。「なんとなく大げさな表現は避けた方がいい」という感覚論ではなく、規制の根拠を持って判断できているかを確認してほしい。
制作会社が法令を理由に外した情報は、信頼の証
法令を根拠に情報を外すことは、一見すると「クライアントの伝えたいことを削る」行為に映る。しかし長期の視点で見れば、これはクライアントの事業リスクを回避する判断だ。
景品表示法に違反した表示が発覚すると、措置命令や課徴金が科される可能性がある(消費者庁『不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)』)。こうしたリスクを見越して、発注前の段階から「外すべき情報」を指摘できる制作会社は、デザインの外にある価値を提供している。
「その表現は載せられません、理由は〇〇です」と明確に言える制作会社を、頼りになるパートナーと判断していい。
発注側が最初に伝えておくべき、外されると困る情報
法令で必要な表記や、ブランドとして譲れない情報を、最初に伝える
「外した理由を聞く」という話をここまで続けてきたが、発注側にも準備すべきことがある。
自社として外されると困る情報——法令上の必要な表記、ブランドとして譲れないメッセージ、競合との差別化に不可欠な要素——は、最初の打ち合わせで制作会社に伝えておく。これにより、制作会社は「何を外すか」の判断をより正確に行える。
「外してほしくない情報」を先に共有することで、構成案が返ってきたときの擦り合わせが格段にスムーズになる。この事前の共有を省いて「なんかイメージと違う」という状態になると、修正が繰り返されてコストと時間が膨らむ——その構造を、発注側から断ち切る手が、この準備だ。
制作会社選びで失敗しないために|よくある質問
複数の制作会社から構成案をもらいました。どうやって比べればいいですか?
構成案の見た目や項目数では比べず、「何を外したか」と「その理由」を聞いてください。同じテーマのLPでも、読み手や商材の理解が異なれば、外す情報は変わります。その理由を具体的に説明できる会社ほど、ディレクション力が高いと判断できます。
ディレクションと企画の違いは何ですか?
企画は「何をするか」を決めること。ディレクションは「何をするか」を決めた後、「どう実行するか」「何を外すか」を判断することです。LPの場合、限られた画面に何を載せるかを決めるのが企画で、その判断の根拠を説明し、実行を導くのがディレクションです。
制作会社が「不掲載理由」を説明できないときは、どうすればいいですか?
その会社は、読み手や商材の理解が浅い可能性があります。「何を外したか」「なぜ外したか」を聞いても、「ユーザーが知りたいから」「スペースがないから」など一般的な理由しか返ってこない場合は、別の会社に相談することをお勧めします。
健康食品のLPを制作する場合、何に気をつけるべきですか?
表示の規制が関わる商材では、「法令上、載せられない」ことが不掲載理由になります。制作会社が景品表示法などの規制を理解し、その理由で情報を外しているかを確認してください。法令を根拠に外した情報は、クライアントのリスク回避を示す判断です。
発注前に、制作会社に何を伝えておくべきですか?
法令で必要な表記、ブランドとして譲れない情報、競合との差別化に不可欠な要素など、「外されると困る情報」を最初に伝えてください。これにより、制作会社は「何を外すか」の判断をより正確に行えます。
[画像: 朝の街の店先、開店前の静かな時間帯・清潔感のある光・人物が映っていない落ち着いた構図]
ディレクション重視の発注に応えるために
発注側と制作側の両方を見てきた、経験
私がこの記事でここまで「外した理由」にこだわって書いてきたのは、発注する側の痛みを内側から知っているからだ。
「デザインはきれいなのに、全然売れない」「修正をお願いするたびに費用が膨らんで、もう追加発注ができない」——こういう声は、制作会社に対する不満として語られることが多い。でも実際に現場を見ていると、その根は発注の入口にあることが少なくない。ゴールの定義が曖昧なまま、「なんとなくいいLP」を目指した結果として、成果が出ないLPが生まれている。
発注側がどんなディレクションを必要としているかは、制作側にいるだけでは見えにくい。この記事で書いてきた「外した理由を聞く」という視点は、発注側の目線から制作会社を評価するための手がかりとして渡したものだ。
「何を外すか」の判断を積み重ねてきた実績
LP制作を重ねる中で、私が一番大切にしてきたのは「外した理由を説明できること」だ。商材ごと、読み手ごと、広告の入口ごとに、その判断は変わる。正解は一つではないが、「なぜ外したか」を言語化できない判断は、再現できない。
構成案の段階で「外した情報とその理由」を説明し、発注前から伴走する——それが、ディレクション重視の発注に応えることだと考えている。
今夜、候補の制作会社に1通メールを送れる時間があれば、この一文を書き添えてみてほしい。「御社の構成案で、あえて外した情報と理由を教えてください」。返ってくる答えが、選ぶべき会社を教えてくれる。
参考資料
- 総務省『令和7年 通信利用動向調査』
- 消費者庁『不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)』
LPの成果について、相談先をお探しなら
私は、LP制作に加えて、公開後の数字が動くまで伴走しています。
- 600件を超えるLP制作
- D2C・単品リピート通販に特化
- CVRが落ちている箇所の特定から着手
「作り直すべきか、直すべきか」の判断からご相談を承っています。
今のLPが「どこで・なぜ」成果を落としているのか。その一点を一緒に見るところから始めます。