この記事の要点
ECサイト構築(商品をオンラインで直接販売するための販売基盤の構築)とは、プラットフォーム選定・コンテンツ設計・集客戦略を一体で設計することで成立する仕組みです。健康食品・D2C領域では薬機法による表現制限が加わるため、「誰に向けて何を伝えるか」という顧客分類の設計が、問い合わせ数の多寡を左右する最初の分岐点になります。
「この商品、本当に良いのに、伝えられない」——そう思ったことはありませんか。
ECサイトを立ち上げ、LPを作り、広告を回してみた。でも問い合わせは増えない。担当者に相談すると返ってくるのは「表現が薬機法に抵触するので変えてください」という一言だけ。では何と言えばいいのか。そこまで教えてもらえないまま、修正を繰り返すうちにサイトの言葉はどんどん薄くなっていく。
伝えることを諦めると、問い合わせが減る。当たり前のようで、その連鎖に気づくまでに多くの企業が時間とお金を使ってしまう。
この記事では、その「言えないジレンマ」を突破した視点をお伝えします。鍵は、商品を変えることでも、法律を変えることでもない。顧客の分け方を変えることです。
目次
薬機法で「言いたいことが言えない」—その先にある問い合わせ数の課題

健康食品・D2C企業が直面する表現の壁
健康食品やサプリメントをECで販売する企業が、必ずぶつかる現実があります。
「体調が整う」「すっきりする」「変化を感じた」——顧客がリアルに感じている言葉を、サイトには書けない。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、未承認の医薬品的効能・効果を標榜することを禁じており、食品が「効く」「治る」「改善する」という表現を使えば行政指導の対象になります。
これは法律論ではなく、現場の問題です。ECサイトを作っても言葉を使えない。制作会社に発注しても「法的にNGです」と言われるだけで、「では何と言えばいいか」の答えは出てこない。私がEC事業の担当者として発注側に立っていたころ、この壁の前で何度も立ち止まりました。
問題の根は、「何を言えないか」は分かるが「何を言えるか」を誰も設計してくれないという構造にあります。
表現制限が招く、問い合わせ数の低下メカニズム
「言えない言葉」を削るだけで終わると、ページに残るのは製品名と成分表示だけになる——これが最悪のパターンです。
読者は画面の前で、「この商品、自分に関係があるのか」を探しています。その文脈をつかめないまま10秒が過ぎると、ページを閉じる。問い合わせどころか、ページの最下部まで読んでもらえない。
制限された表現のままで言葉を薄くしていくと、こうしたことが起きます。
- 読者は「自分のための商品だ」とイメージできない
- ページ上に「だから今すぐ相談したい」という動機が生まれない
- 問い合わせフォームまで辿り着く前に離脱する
これは「デザインの問題」でも「価格の問題」でもありません。誰に向けて書かれているかが、読者に届いていないことが原因です。
顧客分類を見直すと、同じ商品でも訴求軸が変わる

「健康食品」という一括りから脱出する
「うちの商品は健康食品です」——この一文が、実は問い合わせ数を減らしている可能性があります。
「健康食品を買いたい人」という単一のカテゴリで顧客を捉えると、訴求はどこまでも曖昧になる。でも実際の購買行動を見ると、同じ商品を選ぶ人でも動機はまったく違います。
たとえば、同じ発酵系のサプリメントを選ぶ顧客を細かく見ると:
- 美容習慣として取り入れたい層:肌の調子や外見的なコンディションを気にかけている
- 日々の栄養バランスを補いたい層:食事が偏りがちで、手軽に素材を補給したい
- 生活リズムを整えたい層:毎朝のルーティンに何か一つ加えることで、1日のスタートを変えたい
この3つは、同じ商品を選ぶ理由が違う。伝えるべき言葉も、見せるべきビジュアルも、ページ上で先に解決すべき不安も、それぞれ異なります。
「健康食品」という括りのままでは、この3者全員に向けて、一つの訴求で戦おうとしている。薬機法の制約が最も厳しくなるのも、この「全員に効果を伝えようとする」発想の時です。
顧客分類の見直しが問い合わせ数を増やす理由
顧客をニーズ軸で分類し直すと、見えてくるものが変わります。
「美容習慣として取り入れたい層」には、美容の文脈で語れる言葉があります。「生活リズムを整えたい層」には、朝のルーティンという文脈で語れる入口があります。それぞれ、薬機法上で使える表現の種類が広がる。「効く」と言わなくても、「この人に向けて書かれている」という文脈が伝わると、読者はページを読み続けます。
複数の分類軸を設けると、複数の入口からページへの流入が起きます。結果として、全体の問い合わせ数が増える。これは「表現を工夫する」という話ではなく、「誰に向けて何を伝えるか」という戦略の転換です。
経済産業省『電子商取引に関する市場調査』が毎年公表するデータでも、EC市場全体の拡大傾向が示されていますが、伸びているプレイヤーに共通するのは「誰に何を届けるか」を明確にしている点です。市場が大きくなっても、訴求が曖昧なままでは取り分は増えません。
| こんな状況の企業様 | 顧客分類を変える前 | 顧客分類を変えた後 |
|---|---|---|
| 薬機法で表現が制限され、商品価値が十分に伝わらない | 「健康食品」という単一分類で全顧客に同じ訴求 | 「美容習慣」「栄養補給」「生活リズム」など複数軸で分類し、各層に最適な訴求を設計 |
| 問い合わせ数が伸び悩んでいる | 制限される表現の中で訴求軸が限定される | 複数の入口から問い合わせが流入し、全体数が増加 |
| LP改善を検討しているが、デザイン変更だけでは手応えがない | ビジュアルやレイアウトの改善にとどまっている | 顧客分類・コンテンツ構成・クリエイティブを一体で改善 |
| SEO対策と薬機法対応の両立が難しい | 表現制限とキーワード含有のバランスが取れていない | LLMO対応で、制限内での表現とSEO対策を同時に設計 |
EC現場経験者が知る、制限の中での最適な設計
発注側・運用側・成果責任側を経験した視点が教えること
制作会社に発注するとき、相手が「作る側しか知らない」のか「売る側の痛みも知っている」のかで、提案の質がまるで変わります。
私がEC事業の担当者だったころ、制作会社との打ち合わせで最も困ったのは「薬機法でこの表現はNGです」という指摘を受けた後、「では何と言えばいいか」まで一緒に考えてもらえないことでした。制作側は「作る」責任を持っていても、「売れる」責任は持っていない。そこに構造的な温度差があります。
発注側・運用側・成果責任側、この三つの立場を同時に経験すると、「言えない表現」の裏にある本当の問いが見えてきます。それは「何を言ってはいけないか」ではなく、「制限の中で、何を言えば読者はページを読み続けるか」です。
制限の中で「言える最大限」を引き出すコンテンツ設計
薬機法の制約は、創意工夫の余地を奪うものではありません。むしろ「言葉以外で伝える」という設計の精度を上げるきっかけになります。
制限される表現の代わりに、何を使うか。具体的には次のような要素です。
- 使用シーンの描写:「朝のルーティンの一つとして」「忙しい日の栄養補給として」という生活への組み込み方
- 素材・製法の開示:どんな素材が入っているか、どのようなプロセスで作られているかという事実の提示
- 顧客の言葉:「使ってみた感想」として顧客自身が語る文脈(個人の感想であり効果を保証するものではない旨を明記した上で)
- ビジュアルによる文脈設定:商品単体ではなく、どんな人のどんな朝に置かれているかを画像で伝える
「言いたいことが言えない」という状況で手が止まる企業と、制限の中で訴求設計を組み替えられる企業では、同じ商品でもページから生まれる問い合わせの数が変わります。変えたのは言葉の量ではなく、誰に向けて・何の文脈で・どの順番で伝えるかという構造です。
問い合わせ数を増やすコンテンツ構成の工夫

顧客分類ごとの「入口」を複数用意する
「このページは自分のためにある」——読者にそう感じてもらう瞬間が、問い合わせへの分岐点です。
顧客分類が一つだと、入口も一つです。でも分類を三つに増やせば、入口も三つ生まれます。一つのECサイトの中に、それぞれの層に向けたランディング構造を持たせることで、検索ワードの種類も広がり、流入した読者がページ内で「自分に関係がある」と感じられる場所が増える。
たとえば検索意図から考えると:
- 「美容習慣として取り入れたい層」は「朝 習慣 サプリ」「美容 ルーティン おすすめ」で調べる
- 「栄養補給を補いたい層」は「栄養 簡単 補給」「食事 偏り サプリ」で調べる
- 「生活リズムを整えたい層」は「朝活 習慣化 サプリ」「毎朝 続けられる」で調べる
これらは同じ商品へたどり着く、別々の経路です。一つのページで全員を捉えようとするより、分類ごとに「この人のために書かれたページだ」と感じられる構成を用意する方が、読み続けてもらえる確率が上がります。
総務省『通信利用動向調査』が示すように、スマートフォンからの情報収集は生活のあらゆる場面に浸透しています。読者が商品にたどり着く経路は多様化している。それに対して入口が一つのままでいることは、機会の損失です。
制限される表現を補う、ビジュアル・構成・ユーザー事例の活用
「言葉で効果を言えないなら、言葉以外で伝える」という発想は、実は長く使われてきた広告の知恵です。
ビジュアルは、言語化できないことを伝える力を持っています。すっきりとした朝の食卓に一本のサプリが置かれているシーンは、「健康をサポートする」という言葉より、読者の想像を動かすことがある。
ユーザー事例も同様です。「使ってみたら3ヶ月続いていた」「朝のルーティンに自然と組み込めた」という言葉は、顧客自身の体験として語られるものです(個人の感想であり効果を保証するものではありません)。これは薬機法的にセンシティブな「効果」の訴求ではなく、「習慣として続けられた事実」の共有です。
ページの構成順序も重要です。「この商品はあなたのためにある」という文脈設定を先に行い、その後に詳細を説明する順番にすることで、読者は最後まで読み続ける動機を持ちます。最初に製品情報から入ると、読者は「自分に関係があるかどうか」を判断できないまま離脱します。
D2C・単品リピート通販に特化した改善の視点
「何を変えたか」を振り返ると見えてくること
ECサイトやLPの改善で大きな変化が起きたケースを振り返ると、変えたのはほぼ共通して次の3点です。
① 顧客分類を変えた:「全員向け」から「この人向け」への転換。ページの冒頭が特定の読者に向けた言葉から始まるようになると、読了率が変わります。
② コンテンツの順番を変えた:製品情報の前に「この商品が存在する文脈」を置いた。「誰のどんな日常に、この商品は合うのか」を先に描くことで、詳細説明が「知りたい情報」として読まれるようになります。
③ 言葉ではなくビジュアルが語る部分を増やした:制限される表現を削った分、使用シーンの写真・顧客の一言・製法の可視化で補完した。言葉の密度より、文脈の密度を上げることに集中しました。
「デザインをきれいにする」「文字を大きくする」という改善との違いは、読者の行動動機に直接触れているかどうかです。ビジュアルを変える前に、「誰に届けるか」と「何を先に伝えるか」を変える。この順番が大切です。
表現制限を「制約」ではなく「設計の精度を上げるきっかけ」として使う
薬機法の制約に向き合うことで、「本当に伝えなければいけないことは何か」を問い直す機会が生まれます。
「効く」と言えないなら、「どんな人のどんな朝に馴染む商品か」を伝える。「改善する」と言えないなら、「継続した結果、どんな習慣が生まれたか」を顧客の言葉で伝える。「治る」と言えないなら、「毎日のケアとして選ばれ続けている事実」を伝える。
D2Cブランドで長期的に成長しているものを見ると、顧客と「商品の文脈」を共有することに成功しています。「この商品がなぜ存在するか」「どんな考えで作られているか」という背景を持った商品は、価格競争に巻き込まれにくい。これは薬機法対応の工夫とも、根本で繋がっています。
LLMO対応で、表現制限と検索流入の両立を実現

薬機法対応とSEO対応の両立が、これまで難しかった理由
「薬機法に抵触しない表現でSEOも効かせる」——この二つを同時に実現することは、従来の制作フローでは難しい問題でした。
SEO(検索エンジン最適化)では、ユーザーが検索するキーワードを含むコンテンツが必要です。しかし健康食品の文脈で多く使われるキーワードには、「改善」「効果」「治る」など、薬機法上の表現が混入しやすい言葉が多い。キーワードを含めると法的リスクが高まる。法的リスクを避けると、SEOが機能しない。
この矛盾を解決するには、「読者の検索意図に応えながら、効果効能の断定は一切しない」というコンテンツ設計が必要になります。これは「キーワードを埋め込む」という発想とは別の次元の技術です。
LLMO対応が切り開く、顧客分類ごとの検索流入
LLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデルを含む検索環境への最適化)は、従来のSEOが想定していなかった検索行動に対応するアプローチです。
ChatGPTやGeminiなどのAIが回答を生成する際、参照するのは「キーワードが含まれているページ」ではなく「質問に対して的確に答えているページ」です。健康食品の文脈でいえば、「〇〇に効きますか」という質問に対して、薬機法に抵触せず、かつ読者の疑問に誠実に答えているコンテンツが引用されやすくなります。
総務省『情報通信白書』が示すように、情報収集手段の多様化は進んでいます。検索エンジンだけでなく、AI問い合わせを経由して商品ページに辿り着くユーザーが増えている中で、LLMO対応は「将来の話」ではなく「今年(2026年)時点でのリアルな集客手段」です。
顧客分類ごとに最適化されたコンテンツを持ち、それぞれが薬機法の範囲内でAI検索にも応答できる構造を作ることで、「制限される表現で検索流入も取れない」という状況から抜け出すことができます。
顧客分類の見直しから始まる、ECサイト構築の成功
「言いたいことが言えない」から「最適な訴求を複数用意できる」へ
ここまで読んで気づいていただけたことがあれば、それはこういうことではないでしょうか。
薬機法の制約は、「言えること」の可能性を絞っているのではなく、「誰に向けて何を言うか」を明確にしない設計を炙り出している。
言えない言葉を削ることが目的になると、ページは薄くなる。でも「この人に、この文脈で、この順番で伝える」という設計が先にあれば、制限の中でも言えることは十分にある。それどころか、絞られた表現の中で作られるページは、余分な情報を省いた分だけ読者に届きやすくなることがあります。
「言いたいことが全部言える」状態より、「この人だけに向けて最適な一言が言える」状態の方が、問い合わせが増えるケースがある。私がEC現場で学んだのは、その逆説でした。
顧客分類を変えることは、商品を変えることではありません。すでにある商品の価値を、適切な人に、適切な言葉で届けるための、設計の話です。
次の一歩:今いる場所で、分類の問いを立てる
「うちの顧客って、本当に何を求めているんだろう」
今夜、資料を広げなくていいです。パソコンを開かなくてもいい。今日届いた問い合わせメールの言葉を一つ思い出して、その人はなぜ問い合わせてきたのかを、一行でいいので書いてみる。それが、顧客分類を見直す最初の問いになります。
現在のECサイトが「言いたいことが言えない」状態にあるなら、まず「誰に向けて書かれているか」を問い直すところから始められます。ECサイト構築の相談は、構造や費用の話より先に、この問いから始まることが多いです。
ECサイト構築に関するよくある質問
薬機法の制約があっても、本当に問い合わせ数を増やせるの?
制約の中でも、顧客分類を変えることで訴求軸は広がります。「効く」と言えなくても、「この人のこういう朝に合う」という文脈は伝えられます。言葉の制限を補う設計として、ビジュアル・使用シーン・顧客の声(個人の感想)・製法の開示など、薬機法の範囲内で使える要素は複数あります。制限を「削る」作業で終わらせるか、「補う」設計に転換するかで、結果は変わります。
顧客分類って、具体的にどうやって変えればいいの?
起点は「今の顧客が何を求めているか」を一人ずつ見ることです。問い合わせメール・レビュー・SNSのコメントの中に、顧客が自分の言葉で語っている動機があります。それを集めると、いくつかの「文脈のかたまり」が浮かび上がってきます。「美容の延長として選んでいる人」と「食事補完として選んでいる人」では、伝えるべき言葉も、見せるべきビジュアルも違う。その違いが分類の軸になります。
ECサイトを作ってから顧客分類を変えることはできる?
できます。ECサイトの構造やプラットフォームを変えなくても、コンテンツの構成・ランディングページの入口・検索意図への対応を変えることで、分類に沿った訴求設計は後から実装できます。構築とコンテンツ設計を同時に進めるのが理想ですが、既存サイトの改善から始めることも有効な選択です。
モールと自社ECで、顧客分類の戦略は変わるの?
変わります。Amazon・楽天などのモールは、検索キーワードと価格で競争する場です。一方、自社ECは「この商品の文脈」を自由に設計できる場。顧客データも自社に蓄積されます。顧客分類を深く設計して長期的なブランド資産を作りたいなら、自社ECが戦略の中心になります。ただしどちらが「正解」かは事業フェーズと目的によります。経済産業省『電子商取引に関する市場調査』でも自社EC・モール双方の市場拡大が確認されており、併用する選択も現実的です。
LLMOって、うちのECに関係があることなの?
検索行動が変化している今、関係があります。消費者がAI検索を使って「〇〇ってどう選べばいい?」と調べるとき、回答として参照されるのは「的確に答えているコンテンツ」です。健康食品の文脈では、薬機法の範囲内で読者の疑問に誠実に答えているページが、AI検索で引用されやすくなります。SEOとLLMO対応は別の話ではなく、「読者に正直に答えるコンテンツを作る」という方向性では重なります。
参考資料
- 経済産業省『電子商取引に関する市場調査』
- 総務省『情報通信白書』
- 総務省『通信利用動向調査』
- 消費者庁『特定商取引法ガイド』
ECサイトの構築・改善について、相談先をお探しなら
私は、ECサイトの構築から、公開後の売上改善まで一体で支援しています。
- D2C企業のEC事業担当・事業本部長としての発注側経験
- 自社でもD2Cブランド(薬院酵素ORECO)を運営
- 薬機法の制約下での訴求設計
「言いたいことが言えない」という段階からのご相談を承っています。
今のECが「誰に向けて」作られているのか。その一点を一緒に見るところから始めます。