この記事の要点
AI検索が広がる中で広告費を見直すかどうかは、外の予測ではなく、自社の広告がどの検索キーワードで問い合わせを取っているかで判断します。その会社に連絡しないと答えが出ない検索キーワードと、AIの回答を読めば用が済む検索キーワードを分け、広告費を必須キーワードの側に寄せることが、安定した集客につながります。
目次
広告費の見直しは、自社の記録から始まる

AI検索が広がると、広告の見直しが必要になるという話を聞く
「AIが普及したら、広告の効き方が変わる」——そういう話を、ここ最近いたるところで聞くようになりました。
ChatGPTやPerplexityといった生成AIが一般に広まり、ユーザーが情報を探す方法そのものが変わりはじめています。従来は「検索→リスト表示→クリック→ページ閲覧」という導線をたどっていたところが、生成AIの回答によってそのプロセスが短絡化される場面が増えてきた。そうした変化を受け、広告の効果や集客の方法を見直すべきではないかという問いが、多くの事業担当者の頭に浮かんでいると思います。
特にD2Cとして顧客を直接獲得している企業では、CPAの高騰や広告代理店への依存がずっと気になっている。そこにAI検索の波が来て、「このまま広告費を使い続けていいのか」という焦りが重なる。私がいくつかの現場を見てきた中で、この問いを抱えている担当者がいかに多いか、肌で感じています。
ただ、そこで多くの人がはまる落とし穴があります。外の声に引っ張られて、まだ自社の記録を見ていない段階で「広告を減らすべきか」を判断しようとすることです。
しかし、見直すかどうかは、外の予測ではなく自社の広告がどう機能しているかで決まる
業界の予測はあくまで予測です。「AI検索が普及するとクリック数が落ちる」という傾向は一般論として語れますが、あなたの事業の広告が今どう機能しているかは、あなたの記録にしか書いてありません。
かつて私はEC担当者・事業本部長として広告を発注する側にいました。その立場で痛感したのは、「外の情報を追えば追うほど、自社の記録から目が離れていく」という逆説です。広告会社から届くレポートを眺め、業界セミナーの資料を読み込み、それでも結局「自社でどのキーワードから問い合わせが来て、どれが受注になったのか」を掴めていない——そういう状態に陥りやすい。
判断の起点は外ではなく内です。自社の広告がどの検索キーワードで動いていて、そのキーワードからの問い合わせが実際に受注に進んでいるかどうか。その事実を記録の中から読み解くことが、広告費を動かすかどうかを決める唯一の軸になります。
広告費を見直す前に、まず自社の記録を整理する
では、何から始めるか。まず手元にある記録を確認することです。
確認すべき記録は次の4つです。
- 広告の検索キーワードレポート:広告管理画面に蓄積されている、どの検索キーワードでクリックされたかの記録
- 問い合わせフォームの記録:いつ・どんな内容で問い合わせが来たかの記録
- 電話・メールの記録:担当者が受けた相談の内容と日時
- 受注の記録:どの問い合わせが受注に進んだか
この4つを並べることで、「どの検索キーワードから問い合わせが来て、どれが受注になったか」という流れが見えてきます。それが見えて初めて、広告費を動かすかどうかの判断ができるようになります。
検索キーワードには2つの種類がある:AIで答えが出るキーワードと、連絡が必須のキーワード

AIの回答を読めば用が済む検索キーワード
検索キーワードには、大きく分けて2つの種類があります。まず一つ目は、AIの回答を読めば用が済む検索キーワードです。
たとえば、「リターゲティング広告とは」「LP改善の方法」「広告費の相場」「CPA 計算方法」「Google広告とMeta広告の違い」——こうしたキーワードで検索した人が知りたいのは、定義・やり方・比較・基礎知識です。こうした情報は、生成AIが非常に得意とする領域です。AIが丁寧にまとめた回答を読むだけで、その人の疑問は解決します。
ページに広告を出していても、そのキーワードで検索した人が欲しかった答えをAIが提供してしまえば、広告をクリックする動機が薄れます。こうしたキーワードへの広告出稿は、AI検索の普及とともに影響を受けやすいと考えられます。
その会社に連絡しないと答えが出ない検索キーワード(必須キーワード)
もう一つの種類が、私が「必須キーワード」と呼ぶ検索キーワードです。
たとえば、「〇〇県 EC構築 対応」「LP制作 納期 急ぎ」「WEBサイト 見積 中小企業」「〇〇業種 ECサイト 制作実績」——こうしたキーワードで検索した人が求めているのは、その会社固有の情報です。在庫があるか、自分の地域に対応しているか、自分の予算感で見積が出るか、自分の業種に対応しているか。
これらの答えは、AIがどれだけ優れていても生成できません。その会社だけが知っている情報だからです。だから、こうしたキーワードで検索した人は、最終的に必ずその会社に連絡しなければならない。それが「必須キーワード」です。
具体的には、こうしたキーワードが必須キーワードに当たります。
- 「〇〇 見積」「〇〇 料金 相談」
- 「〇〇 〇〇県 対応」「〇〇 地域 範囲」
- 「〇〇 納期 最短」「〇〇 急ぎ 対応」
- 「〇〇 業種 実績」「〇〇 会社 選び方 相談」
必須キーワードこそが、広告費を寄せるべき場所
この区別が、広告費の配分を考える上で中心的な視点になります。
必須キーワードは、AIの回答がどこまで充実しても、最後に会社への連絡が要ります。だから、このキーワードに乗っている広告は、生成AIが普及した後も機能し続けます。一方、AIで答えが出るキーワードに乗っている広告は、AI検索の充実とともに広告経由の流入が減る可能性があります。
これは予測ではなく、検索の構造から導かれる観察です。その会社にしか答えられないことを聞いている人が、その会社に連絡する——この流れはAIが変えることができません。
必須キーワードが、広告費を寄せるべき場所になる理由
AIの回答がどこまで充実しても、必須キーワードの答えは会社にしかない
「在庫はありますか」「〇〇県に対応していますか」「来月までに納品できますか」——これらの問いに答えられるのは、その会社だけです。
生成AIは大量の情報をもとに回答を生成しますが、その会社の現在の在庫・対応範囲・スケジュール・個別の見積条件は、学習データに存在しません。だからAIは、この種の問いに対して「〇〇社にお問い合わせください」と案内するか、古い情報をもとに不確かな回答を返すしかない。
つまり、必須キーワードで検索した人の行動の最終地点は、必ずその会社への連絡です。広告があれば、そこへ至るルートをひとつ増やすことができます。
必須キーワードからの問い合わせは、受注に進みやすい
必須キーワードで検索している人の状態を考えてみてください。「〇〇 見積 相談」と検索している人は、すでに「この会社に連絡する必要がある」という段階まで来ています。定義を調べている段階でも、比較を検討している段階でもありません。
この段階での問い合わせは、購買の意思決定に近いところにあります。具体的な数値を示すことはできませんが、受注記録と問い合わせ記録を突き合わせると、必須キーワードからの問い合わせが受注に進む割合は、そうでないキーワードからの問い合わせに比べて高い傾向が見られます。問い合わせから受注までの距離が短いのです。
広告費を必須キーワードに集中させることが、安定した集客につながる
広告費の配分を考えるとき、「どのキーワードに乗っている広告が受注につながっているか」を基準にすることが、最も安定した判断です。
必須キーワードに広告費を集中させることで、AI検索の普及による変化を受けにくい集客の仕組みが作れます。ブランドが”回答の中に存在する”状態を作ることが話題になる中でも、必須キーワードへの広告は、AIの回答が充実した世界でも有効であり続けます。
そしてこれは、外の予測に依存した判断ではありません。自社の記録——どのキーワードから問い合わせが来て、どれが受注になったか——に基づいた判断です。
自社の広告がどのキーワードで問い合わせを取っているか、確かめる方法

広告の検索キーワードレポートと問い合わせ記録を並べる
確認の手順は、シンプルです。
まず、広告管理画面から検索キーワードレポートを取り出します。Google広告であれば「検索キーワード」のレポートから、どの検索キーワードで広告がクリックされたかを確認できます。クリック数の多い順に並べ、期間は最低でも3ヶ月分を見てください。
次に、同じ期間の問い合わせフォームの記録、電話・メールの記録を手元に用意します。問い合わせフォームに「どこから来たか」「何を見て連絡したか」という欄がある場合は、その記録も参照してください。
この二つを並べることで、「どの検索キーワードから、どんな内容の問い合わせが来ているか」の全体像が見えてきます。
問い合わせが受注まで進んだキーワードを見分ける
次に、問い合わせの記録の中から、実際に受注に進んだものを抽出します。
受注に至った問い合わせが、どの検索キーワードから来ていたか——ここを確認します。もし問い合わせフォームに検索キーワードの記録がなければ、問い合わせの日時と広告のクリック記録を照合することで、対応関係を推測できる場合があります。
受注に進まなかった問い合わせとの違いを見ることで、「本当に効いているキーワード」が浮かび上がります。受注に進まない問い合わせが多いキーワードは、広告はクリックされていても、実際の受注には結びついていない可能性があります。
以下の表は、どの記録で何を確認し、広告費の見直しにどう使うかを整理したものです。
| 手元の記録 | その記録で見る項目 | 見直しの判断に使う問い |
|---|---|---|
| 広告の検索キーワードレポート | どの検索キーワードがクリックされているか、クリック数の多い順 | このキーワードは、その会社に連絡が必須のキーワードか、それともAIで答えが出るキーワードか |
| 問い合わせフォームの記録 | どの検索キーワードから問い合わせが来たか、問い合わせの日時と内容 | この問い合わせは、受注に進んだか、それとも途中で終わったか |
| 電話・メールの記録 | どの検索キーワードから電話やメールが来たか、相談内容 | この相談は、自社の対応範囲内か、それとも対応できない内容か |
| 受注の記録 | どの検索キーワードから来た問い合わせが受注に進んだか、受注額 | 受注に進んだ問い合わせの検索キーワードに、共通点があるか |
必須キーワードと、そうでないキーワードを分ける
受注に進んだ問い合わせの検索キーワードを手元に揃えたら、それぞれが「連絡必須キーワードか、そうでないか」を分類します。
判定の問いはシンプルです。「このキーワードで検索した人の疑問を、AIは答えられるか」。もし答えられるなら、そのキーワードはAIで用が済むキーワードです。もし答えられないなら(在庫・見積・納期・対応地域など)、それは必須キーワードです。
この分類作業を通じて、自社にとって本当に機能している広告がどれかが明確になります。そして、そうでない広告に対してどう動くかの判断ができるようになります。
必須キーワード以外の広告費は、すぐ止めるのではなく記録を見ながら動かす
AIで答えが出るキーワードの広告は、すぐには止めない
「AIで答えが出るキーワードの広告はすぐ止めるべき」という結論には、私は慎重です。
現時点では、AI検索の利用率も、検索エンジンのクリック傾向も、業界や年齢層によって大きく異なります。AIで答えが出るキーワードであっても、そこから問い合わせが来ていて、受注に進んでいるケースは実際にあります。
すぐに止めるのではなく、「このキーワードからの問い合わせが、実際に受注に進んでいるかどうか」を複数月の記録で確認することが先です。
3ヶ月分の記録を見て、受注に進んだ問い合わせの有無を確認する
1ヶ月の記録だけでは、判断が不十分な場合があります。月によってキャンペーンの影響があったり、季節変動があったりするためです。
3ヶ月分の記録を並べ、その期間中にそのキーワードから来た問い合わせが受注に進んでいるかどうかを確認してください。3ヶ月見ても受注に進んだ問い合わせがないキーワードであれば、その広告費を続けることの根拠が薄くなってきます。
受注に進まないキーワードの広告費は、少しずつ減らしていく
複数月の記録を見ても受注に進まないキーワードの広告費は、いきなり全額止めるのではなく、少しずつ減らしていくことをお勧めします。
急に止めると、もしそのキーワードから潜在的な問い合わせが来ていた場合、その変化に気づけなくなります。少しずつ減らしながら、問い合わせの件数や質に変化があるかどうかを観察することで、本当にそのキーワードが不要なのかを確かめることができます。
判断は、常に記録と一緒に動かす。それが、外の予測に振り回されずに広告費を動かすための基本的な姿勢です。
自社のページに、必須キーワードに答える情報を載せておく

必須キーワードで検索した人が、ページで答えを見つけられるようにする
広告で必須キーワードに乗っていても、ページを訪れた人が探していた情報を見つけられなければ、問い合わせに進みません。
「〇〇県に対応していますか」という問いを持って訪れた人が、ページのどこを見ても対応地域が書いていなければ、その人は問い合わせする前に離れてしまいます。広告費をかけて呼び込んでも、ページでの離脱で終わるということは、現場でよく起きています。
必須キーワードに答える情報が、ページ上に明確に書かれていること——これが、広告費を無駄にしないための前提条件です。
対応範囲・問い合わせの方法・連絡後の流れを明確に書く
必須キーワードに答えるために、ページに載せておくべき情報の例を挙げます。
- 対応地域・対応業種:「〇〇県・〇〇市に対応しています」「〇〇業種・〇〇業種のご依頼を受けています」
- 納期の目安:「通常〇週間〜〇ヶ月での納品を目安にしています」(確定事実として書ける場合のみ)
- 見積の流れ:「お問い合わせいただいた後、〇営業日以内にヒアリングのご連絡をしています」
- 問い合わせ方法:フォーム・電話・メール、それぞれの連絡先と受付時間
これらの情報があることで、必須キーワードで検索して訪れた人が「ここに連絡すれば答えが出る」と判断できるようになります。問い合わせへの心理的なハードルが下がります。
ページの情報が古くなっていないか、定期的に確認する
対応範囲・納期・担当窓口などの情報は、時間とともに変わる可能性があります。ページに書いてある情報が現在の自社の状況と合っていなければ、「対応していると書いてあるのに実際には対応していない」という混乱が起きます。
季節ごと、あるいは体制が変わるたびにページを見直す習慣を持つことが、必須キーワードへの広告投資を安定して機能させるために必要です。
ページは、一度作って終わりではありません。記録と同じように、定期的に確認・更新するものとして管理することが大切です。
AI検索時代の広告費、読者からよくある質問
広告をすぐに止めてもいいですか?
複数月の記録を見て、そのキーワードからの問い合わせが受注に進んでいないことを確認してから、少しずつ減らすことをお勧めします。1ヶ月の記録だけでは判断が不十分な場合もあります。
検索キーワードレポートが見られない場合はどうしたらいいですか?
広告管理画面の設定を確認するか、広告を運用している担当者に問い合わせてください。検索キーワードの記録がなければ、問い合わせフォームに「どこから来たか」を記入する欄を追加することで、記録を作ることができます。
自社にとって「必須キーワード」の見つけ方は?
自社の在庫・対応範囲・見積・納期・対応地域など、その会社に連絡しないと答えが出ない情報を求めるキーワードです。受注に進んだ問い合わせの検索キーワードを見ると、必須キーワードの傾向が見えてきます。
ページに載せておくべき情報は何ですか?
対応地域・対応業種・納期の目安・見積の流れ・問い合わせ方法など、必須キーワードで検索した人が知りたい情報です。自社の必須キーワードに答える情報を、ページに明確に書いておくことで、問い合わせに進みやすくなります。
広告運用を外部に任せている場合、何を頼めばいいですか?
検索キーワードレポートと問い合わせ記録を突き合わせるデータの整理、受注に進んだ問い合わせの検索キーワードの分析を頼むことができます。その結果に基づいて、広告費の配分を見直すことをお勧めします。
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自社の広告と問い合わせ記録を整理するところから始める
「自社の記録を見れば判断できる」と言っても、毎日の業務の中で記録の整理・分析まで手が回らない——そういう状況が現実だということは、私もよくわかっています。
私は、D2C企業のEC担当者・事業本部長として広告を発注する側で動いてきた経験から、検索キーワードレポートと問い合わせ記録を突き合わせるプロセスを、伴走しながら一緒に整理することができます。
どのキーワードが必須キーワードで、どのキーワードがAIで答えが出るキーワードか。その分類から広告費の配分を見直し、さらにページ側に必須キーワードに答える情報が揃っているかどうかの確認と改善まで、一体で提案することができます。
まず、今週の仕事が一段落したその夜に、自社の広告管理画面を開いてみてください。検索キーワードレポートを見て、そこに「必須キーワード」が何キーワードあるか、数えてみることから始まります。それだけでも、次の打ち手が変わってきます。
もし「一緒に整理したい」と思ったときは、ここから相談をはじめてください。
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