この記事の要点
SEOのキーワード選定とは、検索ユーザーが使う言葉を選び、そのページを検索結果に表示させる仕組みのことです。ツールが示す検索ボリュームは見積もりにすぎず、自社サービスに特有の言葉は表示されないことがあります。お客さまとの接点で実際に使われた言葉(接点語)から始めることで、アクセスではなく成果につながる選定ができます。
ホームページを作り直した。広告費もかけている。それでも、問い合わせが増えない——。
そういう状況で「SEOをやるべきでは」という結論になり、「キーワード選定」という言葉にたどり着く方は多いと思います。私が見てきた現場でも、この順番で悩みが深まるケースは珍しくありませんでした。
ただ、その段階で「キーワード選定ツールを開いて検索ボリュームを調べる」という方向に進むと、重要な何かを見落とすことになります。
この記事では、ツールを開く前にやるべきことを、Googleの公式ドキュメントと実務の観点から整理します。社内にSEO専任担当がいない企業の意思決定者の方が、外部パートナーを評価したり、自社の方針を立てたりする際の「問いの立て方」として読んでもらえると、役に立つ内容になっています。
目次
ツールを開く前に、接点語を集める理由

問い合わせ・商談・購入前の質問の記録を見る
キーワード選定で最初に手を付けるべき場所は、ツールの検索窓ではなく、自社の問い合わせ履歴や商談メモ、購入前にお客さまが送ってきた質問のメールです。
なぜか。お客さまが実際に使った言葉が、そこにあるからです。
「〇〇は△△に対応していますか」「□□と□□の違いを教えてください」「初めてなんですが、どれを選べばいいですか」——こうした言葉が、検索の出発点と近い表現であることは少なくありません。
問い合わせ記録を見ると、何人ものお客さまが似た言葉を使って同じ質問をしている場面に気づくはずです。その共通点を拾うことが、キーワード選定の最初の一歩になります。ツールはその後の補助として機能します。
接点語とは何か、なぜ検索ボリュームが小さくてもよいのか
ここで「接点語」という言葉を定義しておきます。
接点語とは、お客さまとの実際の接点(問い合わせ・商談・購入前の質問・レビューのコメントなど)の中で、お客さまが自分の言葉で表現した言葉のことです。業界の専門用語でも、Googleが認識する正式な表現でもなく、お客さまがそのとき自然に使った言葉です。
「検索ボリュームが小さいキーワードは意味がない」という話を耳にすることがあります。しかし、問い合わせや購入に至った方が実際に使っていた言葉を選ぶとしたら、ボリュームの大小は選定の最初の基準にはなりません。
大切なのは、その言葉に対して自社が経験から答えられるかどうかです。答えられる言葉であれば、たとえ検索ボリュームが小さくても、同じ課題を持つお客さまの検索に応えられる記事が作れます。ボリュームが小さい言葉ほど、検索したお客さまの課題が具体的であることが多く、問い合わせや購入に近い段階にいる場合があります。
検索ボリュームツールの限界と、お客さまの言葉が漏れる仕組み
検索ボリュームは見積もりであり、非常に少ない語は対象外になる
Google 広告ヘルプのキーワード プランナーの説明によると、表示される検索ボリュームは実際の検索数ではなく「見積もり」です。また、非常に検索数が少ない語は表示の対象外になります。
つまり、キーワード プランナーに表示されない言葉が存在するということです。表示されないからといって、その言葉でだれも検索していないわけではありません。表示されないほど件数が少ないというだけです。
ここに盲点があります。表示されなかった言葉を「存在しないキーワード」として扱ってしまうと、お客さまが実際に使っている言葉を見落とすことになります。
商品が具体的な事業者ほど、お客さまの言葉はツールの一覧から漏れやすい
D2Cや特定の商品カテゴリに絞り込んだEC事業では、取り扱う商品が具体的であるほど、お客さまが使う言葉も具体的になります。
たとえば、ある素材や製法を特徴にした商品を販売している場合、お客さまは「〇〇素材 △△に合う」「□□製法 違い」のように、その商品に特有の組み合わせで検索することがあります。こうした言葉は、汎用的な検索ボリュームツールの一覧には表示されにくい傾向があります。
扱う商品・サービスが具体的であればあるほど、ツールに頼るだけでは自社に合った言葉が集まりにくい構造があります。問い合わせや商談の記録が、その補完として機能する理由がここにあります。
詳しい人と詳しくない人では、検索に使う言葉が違う
業界の言い方と、お客さまの言い方は別物
Google 検索セントラルの「検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」には、次のような趣旨の説明があります。「トピックに詳しい人と詳しくない人では、使う検索語句が異なる」。
これは、キーワード選定の実務に直接影響する重要な視点です。
自社のサービスや商品についてよく知っている担当者が思い浮かべる言葉と、それをまったく知らないお客さまが検索窓に入力する言葉は、しばしば一致しません。担当者は業界用語・略語・正式名称で考え、お客さまは「困っていること」「知りたいこと」を、日常の言葉で入力します。
この差を意識せずにキーワードを選ぶと、社内の論理に基づいた記事が積み上がっていきます。それはお客さまが検索する言葉とずれており、検索結果に表示される機会が減ります。
接点語を集める意味は、この「言葉のずれ」を解消することにあります。問い合わせやレビューの言葉を拾うことは、お客さまの視点に立ったキーワード選定の最も素直な方法です。
すべての検索語句を予測する必要はない
Google 検索セントラルのスターター ガイドには、Googleが多様な検索語句とページの関連を把握できるという説明も含まれています。
すべての検索語句を網羅しようとする必要はありません。接点語として集まった言葉の中から、自社が経験から答えられるものを選んで記事にする。それを積み重ねていくことが、現実的な進め方です。
「全パターンを先に洗い出してからでないと始められない」という完璧主義は、着手を遅らせます。まず接点語から始めることの合理性は、完全な予測が不要である点にもあります。
キーワード選定の本当の基準は「自社が答えられるか」
経験のないニッチなトピックを大量に作ることの危険性
Google 検索セントラルの「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」には、コンテンツを見直すべきケースとして次の趣旨の説明があります。「実際の経験がないのに、検索トラフィックを見込んでニッチなトピックを扱っている」。
経験のない領域の記事を量産しても、ユーザーの問いに実質的な答えを返せません。Googleはそういったコンテンツを評価しない方向で判断基準を整備しています。
これは、キーワード選定の選考基準に直結します。検索ボリュームが大きいからという理由だけでキーワードを選び、経験のない内容を書くことは、リスクがあります。自社がそのトピックについて経験から答えられるかどうかが、選ぶかどうかの最初の問いになります。
検索エンジンからのアクセスを増やすことだけを目的にしない
同じく「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」では、「検索エンジンからのアクセスを増やすことを主な目的に作っている」コンテンツを見直し対象として挙げています。
アクセス数と成果(問い合わせ・購入)は別のものです。アクセスが増えても問い合わせが増えない状況に悩んでいる方に、この視点は刺さるのではないでしょうか。
アクセスを目的にするとキーワードの選び方が変わります。ボリュームの大きい言葉を追い、広いテーマで記事を書き、結果として自社の強みから離れたコンテンツが増えていきます。
成果を目的にすると、選ぶ言葉が変わります。お客さまが購入や問い合わせの前後に使っていた言葉を選び、自社が経験から答えられる内容を書く。接点語から始めることは、この「目的の再設定」と表裏一体です。
Search Consoleで、すでに表示されている言葉を確認する

表示回数とクリック数の意味を理解する
Google Search Console ヘルプの「表示回数、掲載順位、クリック数とは」によると、表示回数とは検索結果にページが表示された回数、クリック数とは検索結果からサイトへ移動した回数です。
この2つの数値の差に着目することが大切です。表示回数が多いのにクリック数が少ない言葉は、検索結果には出ているが、タイトルや説明文がクリックされていないことを示しています。逆に、クリック数が一定数ある言葉は、すでに読者との接点が生まれている言葉です。
数値の大小より、まずこの関係を理解しておくことが、Search Consoleを読むときの出発点になります。
接点語と、実際に表示されている言葉を突き合わせる
接点語を集めた後、Search Consoleで自社サイトがすでに表示されている検索語を確認し、両者を比較します。
この作業で、3つのパターンが見えてきます。
| キーワードの出どころ | 得られる情報 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| キーワード プランナー(検索ボリュームツール) | 月間検索数の見積もり | 非常に少ない語は表示されない。実際の検索数ではなく見積もり(Google 広告ヘルプ) |
| Search Console | 自社サイトが表示された検索語と、表示回数・クリック数 | すでに表示されている語のみ分かる。表示されていない語は分からない(Google Search Console ヘルプ) |
| 接点語(問い合わせ・商談・購入前の質問の記録) | お客さまが実際に使った言葉 | 件数の多さは分からない。ただし、自社が答えられる言葉が集まる |
接点語の中にSearch Consoleでも確認できる言葉があれば、その言葉は「お客さまが使っていて、かつすでに検索結果に表示されている」という二重の根拠を持ちます。そこから記事を整える優先度を上げることが、現実的な進め方です。
Search Consoleで確認できるのは、あくまでも自社サイトがすでに表示されている語に限られます。まだ表示されていない言葉は、Search Consoleでは分かりません。その補完として接点語と、必要であればキーワード プランナーを組み合わせます。
選んだ言葉を詰め込まない、ページを量産しない
キーワードの乱用は、スパムに関するポリシーに違反する
Google 検索セントラルの「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」には、「キーワードの乱用」として、ランキング操作を目的としてキーワードをテキストに詰め込む行為がポリシー違反であると明記されています。
キーワードを選んだ後に陥りがちな罠は、「選んだ言葉を何度も本文に入れれば上位表示される」という思い込みです。記事全体を通して自然な文章の中に言葉が含まれることが大切であり、不自然な繰り返しはポリシーに抵触するリスクがあります。
選定したキーワードは、読者への答えを書くための道しるべです。その言葉を使えているかどうかより、その言葉が示す問いに答えられているかどうかが優先されます。
ページ数の多さではなく、答えの質が評価される
同じポリシーでは、「大量生成されたコンテンツの不正使用」として、ユーザーのためでなくランキング操作を主な目的に大量のページを作ることをポリシー違反として挙げています。
「キーワードを増やすためにページを増やす」という戦略には、このリスクがあります。
キーワードの数だけページを作っても、それぞれのページがお客さまの問いに実質的な答えを返せていなければ、評価の対象にはなりません。接点語から始める選定は、「答えられる言葉だけを選ぶ」という絞り込みを自然に促します。量より質という方針は、ポリシーとも整合しています。
AI検索が広がっても、選び方を別に作る必要はない
AI による概要や AI モードに表示されるための追加の最適化は不要
Google 検索セントラルの「AI 機能とウェブサイト」には、次の趣旨が明記されています。「AI による概要や AI モードに表示されるための追加の要件はなく、特別な最適化も要らない」。
AI検索への対応として、キーワード選定の方法を別に作る必要はありません。ユーザーの問いに答えられるコンテンツを作るという基本は、AI検索でも通常の検索でも変わりません。
「AI検索時代に合ったキーワード選定」という新しいフレームを追いかける前に、お客さまとの接点で集まった言葉から答えられる記事を作るという基本を固めることが、現時点での正しい順番です。
AI検索からのトラフィックも、Search Console に含まれる
Google 検索セントラルの「AI 機能とウェブサイト」によると、AI機能から来たトラフィックも、Search Consoleのパフォーマンス レポート(検索タイプ「ウェブ」)に含まれます。
計測の方法を変える必要はありません。すでにSearch Consoleを使っているのであれば、AI検索からのアクセスも同じ場所で確認できます。
ツールを増やすことや、方法論を変えることに時間を使うより、すでに手元にある計測データを読み解き、接点語の選定に使う。そのシンプルな繰り返しが、AI検索が広がった環境でも機能します。
接点語から記事を作るときの、よくある質問
検索ボリュームが小さい言葉は、記事にする価値があるのか?
検索ボリュームの大きさと、記事にする価値は別です。自社が経験から答えられる言葉であれば、ボリュームが小さくても、問い合わせや購入につながる可能性があります。むしろ、ボリュームが小さい言葉ほど、お客さまの具体的な課題が反映されていることが多いため、成果に直結しやすい傾向があります。
1つの記事には、1つのキーワードに絞るべきか?
Googleの公式ドキュメントに、1記事1キーワードという決まりは書かれていません。大切なのは、読者の問いに対して、自社が経験から答えられるかどうかです。複数の関連する言葉が、同じ答えの中に自然に含まれることもあります。
記事は何文字書けば、SEOで有利になるのか?
Googleの公式ドキュメントには、文字数の設定は存在しないと明記されています。大切なのは、読者の問いに対して、自社が経験から答えられているかどうかです。文字数ではなく、答えの質が評価されます。
AI検索(AI Overviews)が広がると、キーワード選定の方法を変える必要があるのか?
Google 検索セントラルの「AI 機能とウェブサイト」によると、AI機能に表示されるための追加の最適化は不要です。キーワード選定の方法を別に作る必要はありません。AI検索からのトラフィックも、Search Consoleに含まれるため、計測の方法も変わりません。
有料のキーワード選定ツールがなくても、キーワードを選べるのか?
はい。接点語を集め、Search Consoleで確認することで、キーワード選定の基本的な流れを進めることができます。検索ボリュームの見積もりを知りたい場合は、Google キーワード プランナーの基本機能を使うことができます(Google広告アカウントへの支払い情報の設定が必要)。
D2C・EC事業者だからこそ見える、キーワード選定の現場
発注側・運用側の経験から、接点語の価値を知る
キーワード選定について、私がこの整理に確信を持てるのは、制作を依頼する側と依頼される側、両方の立場でWebと向き合ってきた経験があるからです。
発注側にいると、制作会社から提案されるキーワードと、お客さまが実際に送ってくる問い合わせの言葉が、かなりの頻度でずれていることに気づきます。制作会社は検索ボリュームを根拠にキーワードを選びます。しかし、問い合わせフォームに届く言葉は、ツールに表示されないものが混じっています。
そのずれを埋めるために接点語の記録が役に立つと実感したのは、問い合わせを受ける側に立ったからです。「この言葉、ツールには出てこないけど、お客さまは確かに使っている」という発見が積み重なると、キーワード選定の出発点がどこであるべきかが自然に見えてきます。
自社でもECを運営している視点
私が携わる事業の中には、自社でECを運営しているものがあります。そこでは、購入前のお客さまからの問い合わせを受ける立場に日常的にいます。
商品の選び方、他の商品との違い、使い方の不安——そういった問いが、日々届きます。それらを読むたびに、お客さまが検索窓に入力している言葉と、自分たちが記事の中で使っている言葉の距離を意識します。
接点語を集めることの価値は、こうした日常の積み重ねの中で実感するものです。「ツールに出ないから価値がない」ではなく、「ツールに出ないけれど、お客さまは確かにこう言っている」という観察が、キーワード選定の精度を上げていきます。
Webでの集客に課題を感じているとき、最初に手を付けるべき場所は、ツールの検索窓よりも、お客さまとの接点の記録かもしれません。
今夜、問い合わせ履歴を一つ開いて、お客さまがどんな言葉を使っていたか、読み返してみることから始めてみてください。ツールはその後で十分に間に合います。
参考資料
- Google 検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」
- Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」
- Google 検索セントラル「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」
- Google 検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」
- Google Search Console ヘルプ「表示回数、掲載順位、クリック数とは」
- Google 広告ヘルプ「キーワード プランナーを使う」
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